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ヤマトホールディングス株式会社 代表取締役会長 瀬戸 薫

「サービスが先、利益は後」の哲学でイノベーションを起こし続ける

市場に競合がひしめき合うなか、40年近くもトップシェアを走り続けるのは至難の技。それを実現しているのが、宅配便市場のパイオニア・ヤマトグループだ。「宅急便」は人々の生活に欠かせないインフラとなり、同グループの連結売上高は1兆2,600億円を突破。次々と新しい商品やサービスを投入、イノベーションを起こし続け、ライバルたちの追撃をはねつけている。なぜ“クロネコ”は顧客の支持を集め続けることができるのか。ヤマトホールディングス会長の瀬戸氏に聞いた。

― 1976年の「宅急便」開始以来、宅配便市場でトップシェアを維持し続けています。なぜ、これほど強いのですか。

 ハッキリした理由があります。荷物を受け取る利用者、つまりエンドユーザーの利便性向上を図るイノベーションを継続してきたことです。運輸業では収益源である配送料金を支払ってくれる荷主を「顧客」といいますが、当社は顧客以上に、エンドユーザーの使い勝手向上を目指してきました。ここが当社の強みです。

 あらゆる企業は収益拡大のため、差別化にしのぎを削り、顧客を取り込もうとします。しかし、運輸業の場合、「荷物を預かり、お届けする」というビジネスモデル自体は変えようがありません。こうした差別化困難な環境下では、どうしても価格競争が起きやすくなり、顧客囲い込みのための運賃値下げ合戦が発生します。そして、その裏側でエンドユーザーの利便性向上は後回しにされてきました。

 たとえば、宅急便が登場する以前は、「集荷してからお届けするのは1週間後が当たり前」など、早く荷物を届けたいという顧客ニーズはもちろん、早く受け取りたいというエンドユーザーのニーズも汲み取られていませんでした。

― 値引き競争の一方で、物流システムの改革は後回しにされていたのですね。

 そうした構造を変革したのが宅急便。全国一律で翌日配送を実現するなど、宅急便は顧客とエンドユーザーの利便性を飛躍的に高めたと自負しています。ただし、宅急便の実現には、さまざまな困難がともないました。物流システム網を築くには巨額の投資が必要だったのはもちろん、官僚の規制と戦うことも不可避だったからです。会社の存亡を賭けて、あらゆる経営資源を宅急便に投下しました。こうした、利便性を最優先する企業姿勢を保ち続けてきたことが、トップシェアを維持してきた最大の要因だと分析しています。

― 収益源ではないエンドユーザーのための投資が、なぜNo.1の源泉になりえたのですか。

 利便性の高い宅配サービスを使えば、エンドユーザーは顧客である荷主に対して好印象を持ちますよね。「あの会社から買うと便利だ」「次もあの会社に注文しよう」となる。つまり、エンドユーザー重視のサービスは、顧客のビジネス拡大にもつながるんです。その結果、注文増で荷物が多くなり、当社の取扱個数も伸びる。こういう論法です。

― 時間がかかる方法ですね。

 確かに、一見すると、回りくどい方法かもしれません(笑)。しかし、宅急便の創始者である小倉さん(小倉昌男元会長)は、つねに「サービスが先、利益は後」といっていました。「ヤマトにまかせれば安心だ」という信頼感を築き、顧客に取引を継続してもらうためには、絶え間なくイノベーションを行い、サービスの質を磨き続けるほかないのですから。

 こうした考え方は、当社の「DNA」とも呼べるものです。会社の収益より先に顧客の利益やエンドユーザーの使い勝手を考える風土が、ヤマトグループのすみずみに根付いています。

著名経営者

  • 株式会社ディー・エヌ・エー

    南場 智子
  • 株式会社壱番屋

    宗次 德二
  • 株式会社IDOM(旧:株式会社ガリバーインターナショナル)

    羽鳥 兼市
  • 株式会社ファンケル

    池森 賢二
  • シダックス株式会社

    志太 勤
  • 株式会社堀場製作所

    堀場 雅夫

プロフィール

  • お名前瀬戸 薫
  • お名前(ふりがな)せと かおる