― どのように変えたのですか。
これまでは「新築」「賃貸」など不動産マーケットごとにわかれていたサイトを統合したのです。ユーザーが本当に求めているのは、希望条件に対して、マーケットを問わず、全物件のなかから理想の住まいが見つかる探し方のはず。この想いから、リニューアルプロジェクトをスタートしました。
もしも事故があってサイトが休止したら、すぐに10億、20億の損失となる。そんなリスクを承知のうえで実行したのです。
結果、ユーザーから「使いやすい」と高い評価を獲得。そのタイミングで40億円を投じて大々的にプロモーションしたこともあって、利用者数においても国内No.1のサイトになりました。
― 大きなリスクをとって変革できたのはなぜでしょう。
社会にあふれる「不」を解消し、人々を笑顔に、幸せにすることこそ、私たちが事業を遂行する目的だからです。日本の不動産業界を変革し、多くの人がより理想的な住まい方ができる社会をつくる。それを達成するのに必要ならば、どんなチャレンジもためらわない。
私がそう考えるようになった原点は、新卒で入社した不動産会社での体験にあります。担当していたマンションのモデルルームに、若いご夫婦が訪れ、私が紹介した物件をとても気に入ってくださったのですが、ローンの審査に通りませんでした。落胆した二人の姿を見た私は、「なんとかして、いい物件を探してあげたい」。その一心で他社の物件までも紹介。それにより、ご夫婦は希望通りの住まいを購入できました。でも会社にとっては1円の売上にもならない。上司には厳しく叱責されました。
住宅購入は一生に一度ともいえる人生最大の選択。にもかかわらず、当時は住まいに関する十分な情報の入手は困難な状況でした。不動産会社とユーザーの間に「情報の非対称性」があると痛感しました。日本にあるすべての物件情報をデータベース化し、ユーザーが検索できるようしたい。そう考えて、起業したのです。
― 他社の物件を紹介するのは、ビジネス上は適切でない行動のように思えます。
そう考える人が多いでしょうね。でも、目の前に困っている人がいたら助けるのは当たり前でしょう。みなさんは電車で席を譲るときに対価を求めますか? ところがビジネスになると経済合理性だけを優先しがちになる。でも、そのほうが非常識なんです。
普通の感覚を失わずにビジネスを展開する。そのために「利他主義」という社是を掲げています。当社にとって、売上も利益も事業を遂行する目的ではありません。世のため人のために役立つことをした結果、売上があがる。そしてさらに世の中に役に立つことのために利益を再投資していく。
利益とは、社会貢献という目的地に向かうための燃料です。利益を追求するだけの会社は、目的地に向かって走りもしないで「オレはたくさん燃料をためた」と自慢しているようなもの。滑稽ですよね。
プロフィール
- お名前井上 高志
- お名前(ふりがな)いのうえ たかし
- 出身神奈川県
- 身長175cm
- 体重74kg
- 平均睡眠時間5時間
- 平均起床時間7時
- 趣味仕事、陶芸、そば打ち、アウトドア、家族サービス
- おススメ本『ビジョナリー・カンパニー』ジェームズ・C・コリンズ、ジェリー・I.ポラス(著)
- 購読雑誌WEDGE
- 家族妻、息子1人
- 今までに訪れた国20ヵ国
- 座右の銘利他主義
- 尊敬する人稲盛和夫、坂本龍馬
- 好きな食べ物うに
- 嫌いな食べ物特になし