― 片野先生が学習塾を開校した経緯を教えてください。
学生時代に大手の進学塾で講師のアルバイトをしたのが塾に携わった最初です。その時は単なるアルバイトという感覚だったのですが、子どもたちと関わっていく中で気持ちが大きく変わりました。
私は初めての講師経験で教える技術も知識も未熟。他の先生との実力の違いを痛感する毎日でした。それなのに、クラスの生徒は「先生の教え方は分かりやすい」と言って眼をキラキラさせてくれるんです。そんな子どもたちに勇気づけられる毎日で、彼らのためにもっと教え方がうまくなりたいと思うようになっていきました。
そして、最初の1年間で教えた中学3年の生徒が卒業式を終えて、僕のところに来て言ってくれたんです。無事に第1志望の高校に受かったのですが、「片野先生に出会えてよかった」「先生に一番最初にありがとうって言いたかった」と。その言葉がすごく大きくて、自分の転機になりました。
大学3年のときには就職活動を行い、複数の企業から内定を頂きましたが、すべて辞退させて頂きました。子どもたちが本当に行きたいと思ってくれるような塾を自分の手で作りたい。そう考えて、大学4年の22歳のとき、4年近く続けてきた進学塾の講師を辞め、印西市で今の創信学院を立ち上げたのです。
― どんな思いがその時の背中を押したのでしょうか。
自分だから伝えられる何かがあるのではないかと思ったんです。僕も中学の時はかなり羽目を外していて、勉強もしない生徒だったため、あまり学校の先生に好かれるタイプではなかったです。そういう自分だから教えられることがあると思ったのです。
資金もほとんどない中での塾のスタートでしたから、最初は夜中に起きて新聞配達をしながらの日々でした。周囲の誰もが、塾開講は「早すぎる」「無理だ」と言います。でも、自分のやりたいことを自分で始めたんだからと歯を食いしばりました。あのときの苦しさや反骨心は、今でも忘れませんね。
そこからのプロセスは、生徒が導いてくれたんだと思います。彼らが、先生という仕事に誇りを持たせてくれました。学校から弾かれてしまった彼らを見捨ててはおけない。その想いに生徒たち自身が応えてくれたからこそ、今の僕があるのだと思いますね。
― 先生の想いが通じて生徒が成長してくれた例を教えてください。
塾を立ち上げて1年目に教えた中学3年生の男子で、三者面談では素行の悪さもあり学校の先生から就職を勧められていました。もちろん高校進学に必要な学力はありません。ただ、親御さんがすごくいい人で、なんとか高校に行かせたいので塾で教えて欲しいということでした。
そこで、彼に言ったんです。「親に頭を下げさせるようなことはするな。自分のことは自分で責任取れよ。だせえだろ」って。本人はバイクが好きで、私も大のバイクマニアなので話も合いました。本人ととことん話をしていき、「一つくらい自分で乗り越えてみろ」と、高校の合格を目標に課したんです。
それから彼は本当に頑張りました。土日も返上して一から勉強し、5教科で50点に満たない成績だったのが、最終的に5教科で約300点のアップを果たしたんです。そして見事、第1志望の高校に合格することができました。
今では高校生になって、先日は塾にバイトに来て講師補佐をやってくれたんですよ。信じてついてきてくれて、自分で目標に到達することができた。本当にうれしかったですね。
プロフィール
- お名前片野 信也
- お名前(ふりがな)かたの しんや
- 出身千葉県
- 平均睡眠時間5時間
- 趣味野球、麻雀、バイク
- 両親の職業教師
- 座右の銘義を見てせざるは勇無きなり
- 尊敬する人高校時代の野球部監督
- 尊敬する歴史上の人物吉田 松陰
- 思い出に残るプレゼント生徒からもらった手紙