ニッポンの社長

ニッポンの社長 > 株式会社スタートトゥデイ 代表取締役 前澤 友作

― 前澤さんのバンドは2000年にメジャーデビューを果たしています。好きな音楽で食べていけるようになったにも関わらず、なぜ会社経営に専念したのですか?

 経営の方が音楽よりも楽しくなったからです。バンドがメジャーデビューした後、音楽活動は次第にルーティンワークになっていきました。たとえば、まず3分~5分の曲をつくります。そして15曲入りのアルバムを1年に1枚リリース。価格は3,000円。その後、そのアルバムをひっさげて全国でライブツアーを行う。ライブ会場では自分たちのCDやTシャツを販売。そして、また曲をつくり、翌年に3,000円のニューアルバムをリリース。ライブツアー、物販…。やるべきことが決められていて、僕たちはそれをこなすだけ。まるでサラリーマンのようなミュージシャンになりかけていたんです。僕はこんな活動がクリエイティブだとは思えませんでした。

― インディーズ時代の活動は、もっとクリエイティブだったのでしょうか。

 そうですね。インディーズ時代は完全なセルフプロデュース。CDの価格、発売時期、ジャケットデザイン、流通ルートなど、すべてを自分たちで決めることができました。

 もちろんメジャーデビューしても、クリエイティブな活動をしている人もいますよ。たとえば「世界を変える曲をつくるぞ!」という強い気持ちを持てば、ルーティンワークにはならないでしょう。でも、僕たちより活躍しているバンドはたくさんありました。だから、僕たちが活躍できるステージは他にあると思ったんです。

― 経営は音楽よりもクリエイティブな活動なのですか?

 ええ。企業経営には一つとして同じ仕事がありません。常に状況が変化しています。また、お取引先、お客さまなど関わる人の幅が広く、人数も多い。そして、商品、売上など、あらゆることがどんどん増えて、広がっていく。「一体どこまでやれるんだろう?」という無限の可能性を感じていました。

― ここからは前澤さんの経営論やベンチャー論を聞きたいと思います。御社は1998年の設立以来、増収増益を続けており、2010年3月期の年商は170億円を超えました。御社が目覚ましい成長を続けている理由を教えてください。

 自分たちが楽しめる仕事をしているからです。僕たちは洋服が好き。そして、一緒に働いている洋服が好きな“仲間”が好き。誤解を恐れずに言えば、僕たちは趣味の延長でビジネスをしています。それが人の役に立っているから、今の成長につながっているのではないかと思います。

 実際、僕たちは「一緒に儲けましょう」なんて営業はしていません。スタッフが自分の好きなアパレルブランドに営業に行き、自分自身の情熱を伝える。「御社の商品が好きなので、多くの人に届けたい」と。これは僕が輸入レコードを販売していた頃の想いと同じです。そうやって、「ZOZOTOWN」に参加してもらえるショップやブランドを一つずつ増やしてきました。

― 前澤さんは元ミュージシャンですが、音楽と経営に共通点はありますか。

 ありますよ。たとえば、音楽ではリズムが重要です。1曲の歌はイントロから始まり、Aメロ、Bメロへと展開していく。そしてサビで盛り上げて、最後に収束させる。つまり全体のバランスをとりながら、数分の限られた時間の中で起承転結をつくる能力が必要なんです。これはビジネスでも同じだと思います。

 たとえば、資料を作るときもリズムが大事です。資料にも1曲の歌のようなリズムがなければ、読む人に伝わりません。たとえ文字の意味が伝わったとしても、心に訴えかけることはできないでしょう。また営業トークやオフィスデザインにおいても、リズムは大事だと思います。実際、当社のオフィスは直線的でリズミカルなデザインにしています。

 その他にも、音楽と経営の共通点があります。それはメンバー間の信頼関係が大切なこと。信頼関係がなければ、同じ目標に向かって協力しあうことはできません。それは4人のバンドでも270人の会社でも同じです。

― 御社は新卒採用にも積極的に取り組んでいます。学生にとって、ベンチャー企業で働く魅力は何でしょうか。

 経営に近い場所で働けること、若い仲間が多いことでしょうね。もちろん大企業と比べれば、リスクは高いかもしれません。でも、たとえ入社したベンチャー企業がうまくいかなくても、貴重な経験にはなる。だから、一度ぐらいベンチャー企業で働いてもいいと思います。

 ただ「ベンチャー企業」という言葉の定義が難しいですね。僕自身、「ウチはベンチャー企業です」と名乗ったことはありません。そもそも会社とは、常に革新しながら人や世界のために商品・サービスを生み出す公器だと思います。そういった意味では、大企業も老舗企業も「ベンチャー企業」になりえます。企業規模や設立年数は関係ありません。

著名経営者

  • GMOインターネット株式会社

    熊谷 正寿
  • 株式会社ドリームインキュベータ

    堀 紘一
  • 株式会社IDOM(旧:株式会社ガリバーインターナショナル)

    羽鳥 兼市
  • 株式会社ディー・エヌ・エー

    南場 智子
  • 株式会社大戸屋

    三森 久実
  • シダックス株式会社

    志太 勤

プロフィール

  • お名前前澤 友作
  • お名前(ふりがな)まえざわ ゆうさく
  • 出身千葉県
  • 尊敬する人トム・ヨーク(レディオヘッド)、両津勘吉