ニッポンの社長

ニッポンの社長 > 株式会社イエローハット 創業者 鍵山 秀三郎

― 掃除を続けることによって、変化はありましたか?

 最初の10年くらいはありませんでした。むしろ、やればやるほど社員から「あてつけがましい」と批判されるようになりました。でも、他に良い方法が思いつかなかったんです。ですから、迷いながらも掃除をやり続けてきました。すると、設立から12年が経った頃、変化が起きました。なんと社員が自主的に掃除や洗車をするようになったんです。私が命令したわけでもなければ、規則で決めたわけでもありません。その後、掃除をする人数が少しずつ増えていきました。

― 社員に浸透するまでに、10年以上の歳月が必要だったのですね。

 さらに10年が経った時、ほとんどの社員が朝早くから車を洗って、会社と近隣の道路を掃除するようになりました。おかげで「あの会社は掃除をする良い会社だ」と評判が立つようになりました。そして、さらに10年後、「掃除のやり方を教えて欲しい」という人が社外から訪ねてくるようになりました。NHKをはじめ、マスコミからの取材も増加。韓国やドイツからもメディアの取材が来ましたよ。中国の格言に「10年偉大なり、20年畏るべし、30年にして歴史なる」という言葉があります。こと掃除に関しては、この言葉は間違いありません。

― 掃除はイエローハットの成長にどのような影響を与えたのですか?

 なにより社風が良くなりました。会社には職務規定や就業規則がありますが、そんなものをしっかり読んでいる人はいません。社員は職務規定に従って仕事をしているのではなく、社風にしたがって仕事をしています。ですから、社風が良くなれば、自然と良い行動をとるようになります。それがお客さまへの信頼につながっていくわけですね。実際、設立15年目くらいから、少しずつお客さまが認めてくださるようになりました。すると、社員が自信を持つんです。自分たちがやっていることは正しいことなんだと。次第に「あの会社は社員の態度や言葉遣いが良い。しかも誠実だ」と評価されるようになり、発展の基盤が固まりました。

― 具体的に、どのような点が企業成長につながったのですか?

 たとえば商品を売る際、通常は一品単位で見積書を書きます。その中からお客さまが必要な商品を選別するわけです。でも、私たちは見積書を書かずにすみました。数千万円の取引でも、お客さまが信頼してくださったからです。 商売の基本はお客さまとの信頼です。決して、うちに特別な商品があったわけではありません。商品を安くしたわけでもない。それでも成長することができたのは、好意を持ってくださるような会社になれたからだと思います。

― 信頼の根本に社風があり、社風の根本に掃除があると。

 最初の10年、20年にどんな種を蒔くかが大事です。周囲に評価されなくても、自分の信じた道を貫く。ビジネスとして掃除をする人はたくさんいますが、無報酬で継続的に行うことが大切です。 私はイエローハットの代表から退いた後、NPO法人「日本を美しくする会」の相談役に就任しました。この会は、街頭・学校・公共施設などの清掃活動を行い、住民に快適な環境づくりと美しい国づくりの実現を目指す組織です。現在は日本全国に127の組織があり、台湾、ブラジル、アメリカ、中国などの海外にも拠点があります。今年はルーマニアでも活動をしました。あばら屋から始まった掃除が50年という歳月を経て、世界中に広がっているわけです。

― 掃除の効用は何ですか?

 次に良いことができることです。一度良いことをすると、次々といいことができる。反対に、一度悪いことをすると、次々と悪いことをしてしまいます。ユダヤの格言に「ゼロからイチへの距離は、イチから千までの距離より遠い」という言葉があります。掃除はゼロの人をイチにするために、非常に有効だと思います。

著名経営者

  • 株式会社ファーストリテイリング

    柳井 正
  • 株式会社ファンケル

    池森 賢二
  • 株式会社ドリームインキュベータ

    堀 紘一
  • 日本食研ホールディングス株式会社

    大沢 一彦
  • シダックス株式会社

    志太 勤
  • 株式会社ホリプロ

    堀 威夫

プロフィール

  • お名前鍵山 秀三郎
  • お名前(ふりがな)かぎやま ひでざぶろう