― 細井さんがホテルを運営するうえで、もっとも大切にしていることはなんですか。

　それはもう、スタッフの「人財教育」に尽きます。ホテル運営の成否は、現場に立つ人財のよしあしがカギをにぎるといっていいものです。そこで重要なのが、少ない人数で現場を仕切れる、本当のプロフェッショナルを育てることだと私は考えています。

　つまり、なんでも自分のアタマで考えることができ、職場をよくするために果敢にチャレンジできるマネジャーを育成することです。

　そのために私は、つねにスタッフに質問を投げかけているんです。当たり前と思って行動していることでも、「なぜ」を問いかけることで、考え方の本質が見えてきます。そうするとサービスの仕方が変わり、仕事の本質が見えてくる。仕事の本質が見えてくると、人生の本質がわかるようになり、自分の使命が見えてきます。このサイクルを通じて、人は自分で考え、行動できるようになります。

　ホテルでの仕事を通じて、働く人たちに自分の人生の本質を見つけてほしいし、自分が果たすべき使命に、若いうちにぜひ気づいてほしいのです。

― そうした一人ひとりの成長が、ホテルの魅力づくりにつながっていくのですね。

　はい。スタッフ個々のチカラで、ホテルの雰囲気は確実に変わります。それは顧客に敏感に伝わり、価格以上の価値を感じてもらえることで、必ずリピーターになってくれます。その積み重ねがホテルのもつ価値につながり、独自の魅力をつくっていくわけです。

　私はこれまでアジア圏や欧米圏などの世界中のホステルやホテルに自ら泊まり、スタッフにインタビューしながら肌感覚で得た雰囲気をもち帰って、自分が手がけるホテルの企画や運営に活かしてきました。

　そしていまも毎日、何百名ものお客さまをこの目で見ながら、業界の動向やトレンドを正確につかみ、どう活かすべきかを実践的なノウハウとして蓄積しています。

　決して見聞ではなく、私自身の経験によって培われた現場のノウハウを、スタッフにはぜひ吸収してほしいし、惜しむことなく教えていきたいですね。

― 最後に、今後のビジョンを教えてください。

　「CEN DIVERSITY HOTEL」はオープン以来、連日、満室になる盛況ぶりで、おかげさまで順調なすべり出しを見せています。今後はカフェの売上増に注力しながら、多くのお客さまにいっそう親しんでいただけるホテル運営をしていきたいと考えています。

　社名のaffectusはギリシャ語で「感情」を意味します。そして英語でaffectは「影響を与える」という動詞なんです。つまり、働く人が抱く想いによい影響を与える存在であり、会社でありたい。スタッフ一人ひとりに新たな気づきを与えながら、個々の成長に寄与できるようなホテルをつくっていきたいと思います。

　ホテルという場を使って人財育成のお手伝いをし、人として成長するチャンスをつかんでもらいたい――。これまで大事にしてきたこの想いを、今後もいっそうつきつめていきたいですね。