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ニッポンの社長 > インタビュー > 編集者オススメ記事 > 楽天株式会社 代表取締役会長兼社長 三木谷 浩史

※下記はベンチャー通信54号(2013年10月号)から抜粋し、記事は取材時のも のです。

― 起業のきっかけを聞かせてください。

 ハーバードの価値観に刺激を受け、自然と志すようになりました。そこでは、官庁や大企業に所属することが成功じゃない。ゼロから新しくビジネスを興す人こそ、高く評価されていたのです。

 そして93年にMBAを取得し、帰国。ただし、社費で留学させてもらったので、あと5年は勤めようと思っていました。

― その2年後に阪神・淡路大震災が発生し、人生観が変わったと聞きました。

 ええ。故郷の神戸も焼け野原になり、大好きだった叔父と叔母を亡くしました。このときにふっきれたんです。人の命は儚い。自分の人生にも、確実に終わりがやってくる。躊躇なんかしている場合じゃないと、起業を決断しました。

 たしかに、自分の乗っている船から下りるのは怖いですよ。私の場合、興銀という大組織。みんな過去からの継続性を重視して、ものごとを考えています。その価値観からすれば、会社を辞めて起業するなんて危険極まりない。でも実際に船から下りてみると、たいしたことないんですよ。

― 三木谷さんは外国特派員協会の記者会見で「日本の起業家がグローバルで成功できる証になりたい」と語りました。どこまでいったら成功なんでしょう。

 まずは収益の半分以上を海外であげること。そしてEコマースの分野でNo.1になることです。当面のライバルは、Amazon、eBay、アリババでしょうね。

― 世界一への戦略を教えてください。

 私たちのビジネスモデルと企業文化は、世界的にみてもユニークだと自負しています。ですから、これらをグローバルに拡大可能なカタチにすることが第一です。

 そして、日々改善を繰り返し、より優れたサービスをつくっていく。いいサービスをつくらないと、規模が大きくなっても長続きしません。スピードも大切ですが、経営の「仕組み」を確立することが重要です。

― ベンチャー企業が成長するための条件も、仕組みをつくることですか。

 拡大しやすい仕組みをつくることです。ヒットするサービスはシンプルなので、他の類似サービスに切り替えられる可能性も高い。一方、仕組みは外から見えないので、模倣されにくい。つまり、サービスだけで差別化するのではなく、仕組み全体で差別化するわけです。

 そのうえで、改善の繰り返しが大切。正確に表現するなら、「つねに改善を繰り返す仕組みをつくる」ことですね。

― ITベンチャーの場合、技術的なイノベーションに頼る傾向がありますが、改善の積み重ねが大事なんですね。

 そもそも、改善はイノベーション(innovation)の基本です。シュンペーター(イノベーション理論を確立したオーストリアの経済学者。イノベーションの実行者をアントレプレナーと定義した)の定義に照らすと、決して対立する概念ではありません。いわゆる「発明」を意味するのは、インベンション(invention)。iPS細胞やLEDなど、いままでなかったものを生み出すことです。

 たとえば、エンジンの開発は「インベンション」。馬車にエンジンをつけて自動車をつくるのは「イノベーション」。楽天は経営手法やサービスの組み合わせが新しい。この「新結合」がイノベーションであり、改善なんです。楽天が英語を社内公用語にしたのは、まさにイノベーションといえます。

著名経営者

  • 楽天株式会社

    三木谷 浩史
  • エステー株式会社

    鈴木 喬
  • 株式会社スタジオジブリ

    鈴木 敏夫
  • シダックス株式会社

    志太 勤
  • テンプスタッフ株式会社

    篠原 欣子
  • GMOインターネット株式会社

    熊谷 正寿

プロフィール

  • お名前三木谷 浩史
  • お名前(ふりがな)みきたに ひろし